COLUMN
フードロス
松 尾 通
フードロス=食品廃棄物という言葉がある。
残飯という方がより身近だ。
日本の残飯量は供給から消費を引いて換算されるが、約25%が廃棄されていると見られ、世界一の残飯大国だという。
FAO(国連食糧農業機関)の報告によれば、世界には8億人以上の飢餓に苦しんでいる人たちがいる。
一方日本は世界中から60%に及ぶ食糧を輸入し、しかも世界の食料援助総量をはるかに上回る食品を残飯処理している。大きな問題である。
ではフードロスはどこから出るのか。食品製造業から出る産業廃棄物、流通や外食産業から出る事業系廃棄物、家庭から出る生ゴミなどに大別されるが、年間2200万トン程度の発生である。
結婚披露宴のロス率は(23.9%)と極めて高く、宴会場(15.7%)が続く。確かに披露宴や宴会の料理は完食に程遠いのが実感だ。
家庭のロス率も作り過ぎ、古くなった、賞味期限が切れた等で7.7%にも達している。処理費用2兆円や、処分する場所等も深刻な状況だ。
歯科医師の仕事は、食に大きく関連しているので、咀嚼だけではなく、生活習慣のなかの食にかかわる部分についてのアドバイザー機能をも果たすべきという主張を前から行ってきた。
今回フードロスの実態を知って、歯科医師の仕事がここにもあると思った。フードロスを減らすための提言、かかりつけ医であれば家庭内の食の問題をテーマに患者と話すことが、食の量や質、そして栄養、環境まで指導できる可能性がある。
フードロスを減らすことは身近に出来て、総量では地球規模に及ぶ貢献である。今週から早速自分も始めてみようと思う。
余暇の使い方だが、2時間あれば映画、3時間あれば演劇やミュージカルと決めている。早朝から1日がかりのゴルフは、多忙もあって今は完休である。
いま気になっている演劇がある。
村上春樹原作「エレファント・バニッシュ」がそれだが、この演劇はイギリスの演出家サイモン・マクバーニーの手によって、日本人の俳優を使い日本から世界へ向けて発信する試みがなされている。
2003年ロンドン公演がすでに行われているが、タイムズ紙は「村上作品に登場する主人公の内面的混乱を、効果的に劇的に表現している」とし、ガ−ディアン紙は「物語とハイテク魔術が交じり合う驚くべき作品」と評価している。
「エレファント・バニッシュ」は、村上春樹の短編「象の消滅」「パン屋再襲撃」「眠り」の3作を劇化したものだが、キャストに吹越満、高泉淳子、宮本裕子らを配した。
高泉淳子さんについては、少年、少女から老婆まで自在に演じられる女優として、ここ10年以上ずっと見続けている。
この作品は日本公演の後ニューヨーク、ロンドン、パリと公演が続き、世界的に注目されている。7月11日(日)まで。於世田谷パブリックシアター。
日本歯科新聞 歯科情報学 2004年7月6日 より